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Kyoto Sanga F.C. & Takarazuka Review and etc.

雪組『キャプテン・ネモ』シアタードラマシティ

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青年館で見た人から、新興宗教みたいな感じ、と聞いていたけど、確かに宗教でした。ほんとにみんながみんなネモ船長に心酔仕切っていて、そんなネモ船長も聖人のようなことを言う割にはかなりのエゴの持ち主で、総じて思ったことは「ガンダム作品っぽい」でした(どうひっくり返ったやら)。

下級生までしっかり役があるのでお目当ての下級生が居る人は楽しかったんじゃないかと。お衣装も変わらないので、後から気になった下級生を探すのも簡単だし。

あらすじ(本編には影響しません)

原作小説

海底二万里、といえばSFの巨匠、ジュールベルヌの作品で、ジュールベルヌといえば作中のあまりのリアルさ(書かれた当時は荒唐無稽だったけど読んでる現代では実現した技術が多すぎて、むしろ実現してないのはタイムマシンくらい)で、20年以上前に初めて原作を読んだ時には余りのリアルさに作中に出てくる架空の海底地形(スエズ運河の地下にある超巨大海底トンネル)とかホントにあるんじゃないかと思わせられた記憶があります。…逆にその衝撃が強すぎて、話の中で印象に残った場面といえば海底探査の過程で潜水スーツのまま海底に取り残された場面が恐ろしかった、くらいでネモ船長のことなんかこれっぽっちも覚えてないんですよね。あてにならない20年以上前の記憶。

ディズニーシーのアトラクション

原作の記憶がそんなものなのでその後の「ノーチラス号」といえば断然あれです、ディズニーシーの海底2万マイルの印象が強すぎて、原作にある虐げられた人物達と、それをまとめるネモ船長、っていう社会的な設定は全く頭に残って無くて、単なる「学術調査」っていう印象が強いんですよね。

これはディズニーがアトラクションにしたときに、ネモ船長が黒人(当時の迫害対象)を助けたりする描写や、ネモ船長自身(というかノーチラス号自体が)そういう漂泊民的な部分がごっそり削られたんだろうな…と。

15少年漂流記にしてもモーコーの存在とかがあやふやにされていくし(これはディズニーに限ったことではないけど)、原作にある毒というか、社会風刺的な部分が映像(や立体)作品になるとその時代に沿って薄められたり、なかったことになるのはよくあることだし…

原作とかどうでもよかった

潜水艦が「ノーチラス号」ってだけかな…

よくわからないプロローグ

赤いダンサーの中で紅一点ならぬ白一点な咲ちゃん。さすがダンサー彩風咲奈な踊りっぷりではあるものの、あの場面は何を意味していたのだろう…ネモ船長がロシアに行くきっかけになった一族滅亡かな? っていうのがプログラム見てても理解があっているのか不安。

あの(おそらく)冠をかぶった白い鷲の紋章が何かに似てると思ってたけど、「悪い顔したアルビくん」って言われて全力で納得。色合いは赤みがつよいけど確かにアルビくん。

というか一幕はこの群舞と、ボンゴまでで25分という…時間配分おかしくない? っていう。

突然のボンゴ

イギリス軍の(おそらく)帆船に拘束されてた三人、拘束されてた中で気温の変化を測定していたレティシア(彩みちる)が有能過ぎるけど計測機器はあったんだろうか。まさかの体感?

それはそうと、マトカに着いてから、状況わからない四人に対してやっと説明できそうな立場のネモ船長(彩風咲奈)が現れたものの、そこから突然のボンゴ。

ボンゴって誰だよ

という当惑に対しては一応の答えを歌の中で出してくれるのですが、

で、結局ボンゴって誰(の何)だよ

という疑問は消えないまま。ラニに関する人物なのかも知れないとは思う物の、あの場にいた全員の共通認識があるらしい謎の人物ボンゴ。

恐慌を来したラニ(潤花)を落ち着かせる為とは言えあまりにも四人(と客席)に対して不親切すぎる流れでいたたまれない…。

とは言え、このボンゴの中でソロを歌ったゆめ真音くん。前回公演でもコーラスに入っていたので期待の若手。声が澄んでて綺麗。

イケメン船員たち

ロシアの漁船を攻撃するために出向するネモ船長と(愉快な)仲間たちですが、ここは兵士達にもそれぞれソロがあって、やっぱりあすくんの歌声は深みがあるし、真地くん歌上手くなったなぁ…と。

ところでこの船員達、兵士じゃなくて学者集団なんだよね? モリエ博士(汝鳥伶)が言うには各ジャンルの第一人者達のハズ…すっかり兵卒になってるけどこれはマトカに来てからの肉体労働の成果なのだろうか。…でも配役にははじめから航海士とか機関士とか通信士とかあるし…

ところで怒らせると怖いボグダナス(諏訪さき)がDV男の可能性を秘めていて、これはそのうちクズ役を見てみたいところ。

ロシアの工作船はまさかの妻帯

ところでロシアの工作船の流れで、いくら漁船に扮するとは言え、嫁を乗せるのはどのみちおかしいんじゃないかという疑問。嫁は嫁で、夫が軍人で密命を帯びて漁船になりすましてるのをわかった上で乗り込んでるとか益々よく分からん…ロシアでは遠洋漁業の船に嫁も乗せるの?

それにしてもこの嫁、ベロニカ(野々花ひまり)ナイフ振り回して咲ちゃんを刺すけど、刺した後に咲ちゃんにホールドされて抜けないわ、その後で(おそらく血みどろの)咲ちゃんから「生き続けろ」「夫の愛に応えて生きろ」とか(血まみれの姿で)至近距離で迫られるとか無茶苦茶ホラーやん。トラウマになるわ…。

二幕の冒頭もよく分からない

二幕の冒頭の咲ちゃんのソロダンスは…いや、ほんと申し訳ないんだけど高尚すぎて理解の限界の先にあってね…何を意味しているのかさっぱりわからなくて、

咲ちゃん足長いなぁ…

っていう時間でした。

あーさとひとこ、君子は豹変するもの…?

ジョイス博士(華形ひかる)はあの中では相当年かさになるのか、人生の先輩みたいな台詞がちらほらある一方で、やっぱり年齢不詳…

前後するけど、あーさのソロは軍人としての家系に生まれ、それを全うする生き方に疑問も持たずにこれまでやってきたけどそれらが全く通用しないマトカに来た葛藤…っていうのが二幕のみつるとの会話を待たないとわからないのもどうかと思うよ谷先生…単に仲間たち居なくて孤独なのかと思ってしまう。

あーさと潤花ちゃんのいつの間に何があったか一切不明な突然の和解すっとばしてラブは二回見てもやっぱり潤花ちゃんが一方的に歩み寄っているようにしかみえないけどそもそもこの二人の間にラブはあるのかもわからなくなってきた…

ひとこは今回、誰よりも台詞が多かったと思う(そして早口)。イタリア男の軽妙さと、その裏でスパイでした、ってのをやらないと行けないからとても良い成長になったと思います。

が。

あの改心の速さは如何な物か…それまでロシアの後ろ盾を信じて、あのぬるま湯のような「家族」ごっこに迎合したフリをしていたのに(よく染まらなかったもんだ)、船長に諭された途端に家族に染まるって…

ベロニカにしても、船長の洗脳ハンパない。それにしても占い師のツェツィーリア(沙羅アンナ)、「災いを招く霧が晴れた」って言うけど、災い(ロシア艦隊)はもう来てるから。今さら誘蛾灯が消えてももう遅いから。

ロシア艦隊は注力先がズレてる

時間軸がよく分からないけど、帝国列強が植民地の版図を広げようとしていた時代で、「ロシア」だから革命前で…ひょっとすると第一次大戦前あたりかな?

とすればそんな大事な時期に主要な艦隊からごっそり兵力抜いて…そんなことしてるから日露戦争に負けたんじゃないですかね(多分時代としてはたぶんそのへん)。

え、そのラストシーンでいいんですか?

そのロシア艦隊を倒す(?)為に出航しようとするネモ船長。完全に人間魚雷(突っ込む先は海底火山だけど)で、そろそろ客席もついていけない雰囲気…乗組員達もそれに着いていくとはいえ、誰も生きることに執着してなくて怖い。誰も死にたくないと言わないあたりが(尺の問題とは言え)宗教染みててとても怖い。

乗り込んできたレティシアとネモ船長の場面にしても、なんていうか、ほんと両思いに慣れたの数時間だけの事で…まぁロミジュリもそんなもん(あれも一晩だけ)と言えなくもないけど、なんかとってつけたようなラブ要素だったなぁ…と。

とにかく、あのラストシーンは

ほんまにそれでええんか?

っていう動揺がハンパない。客席もあの流れで拍手を入れて良い物なのか…まだ鐘で祐飛さんが機関銃を打ち続けて死んでいった方がわかりやすかった…!

15年くらい前のガンダムで見たような光景

あと、人を殺さない、と言いつつ南極海で船の舵を破壊して航行不能にする(その結果、遭難や転覆等が想定される)っていうネモ船長のエゴがね。そして「微量でも戦い続ける」っていう蟷螂の斧を振りかざす理想主義者っぷり。

あれ? こういう人、10年くらい前のアニメで見たような…? こう…頑なに敵機のコックピットを狙わない…。

でもやってることは結局アスランでしたけどね! 一人でキラもラクスもやるから誰もとめてくれないよ!

呪われた島、マトカ

そもそも海底火山を噴火させたら近くの帆船なんか巻き込まれて相当程度打撃を受けるし、なんなら海底から吹き出したガスの泡に包まれるだけでも浮力失って沈むんだから結局艦隊を攻撃することに変わりはないのでは…? マトカに花火を見せる、というけど海底火山の噴火は「花火」にはならないと思うよ…西ノ島みたいに噴火口が海面に近づかないと火柱も果たして見えるかどうか…

で、そんな物を見せられてマトカの「家族」が「幸せ」に生きられるのか!?

って思うからあのネモ船長の願いというかエゴがほんとに…ぞっとする…この人ヤバイ人や…

青年館で見た人たちの感想で、宗教都市マトカってあったけど、ほんとに新興宗教のようでしたマトカ。

もしくは呪われた島マトカが自分の存在を護るために人を誘って、外界と隔絶した楽園で思考を奪い、やがては異分子を排除するために「マトカの為に死ぬ」ように呪われていく…みたいなホラー作品なのかな、と思うようになりました。そうなると未開の地のヤバい花の花粉とかで思考をやられるんじゃないですかね…で、残された「家族」たちは新たなリーダーあーさの元で「幸せに」暮らしました、っていうホラー。

きっと違う。

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1 comment

  1. Oz

    はじめまして。
    ネモのつっこみどころを冷静に的確に書いてくださって、「ああ…そうだった…」と思い返しています。
    そして、ジョイス博士の描写(というか設定)の少なさが気になっていましたが、年齢設定すら明確に描かれてなかったことに改めて愕然としました。ナウオンステージで華形さんが「通し稽古があと2回だけど、“何かあるんじゃないか”と思って台本を見てる」みたいな事を仰ってて、観劇後に改めてそれを聞くと、なんだか華形さんが気の毒になってきました…(苦笑)

    また観劇感想を楽しみにしています(^^)

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